2009年5月24日日曜日

エコポイントと経済のエコロジー

エコポイントなるものを政府は始めるらしい。
グリーン家電製品を購入された方々は、様々な商品・サービスと交換可能なエコポイントが取得できます」
「グリーン家電製品」とは、エアコン、冷蔵庫と地上デジタル放送対応テレビの3種類なのだそうだ。これは、一見、電力を消費する旧型の電化製品を電力をより消費しない製品に置き換えることで、環境対策になるように見えるかもしれないが、そんな保証はどこにもない。むしろ、史上まれに見る愚かな政策のように思えてくる。

まず、なぜこの3種類しか対象にならないのか。非合理だ。次に、支給されるエコポイントなるものが何と引き替え可能なのかが、まだ決まっていない。それならメリットがはっきりしないではないか。

さらに、これは一種の景品だから、割引と同様、「グリーン家電製品」の売り上げ促進効果があるだろう。だからこれは、明かな政府による税金を使った市場経済への介入だ。そして、売り上げを促進するのだから、環境対策には一方で負の効果が生じることは明かだ。古い製品を全量回収できるかどうかも明かでない。地デジ対応テレビが対象になっていることを考えると、これは環境対策なのではなく、景気対策なのではないか。それなら、エコポイントという名前は国民をミスリードしている。

では、景気対策としてはどうか。それも疑問である。この制度が何年も続く保証はない。一定期間の売り上げ増はありうるが、継続した効果は期待できない。また、その3つの製品だけに効果があるので、他の製品の価値を相対的に減損するのではないか。それは、メーカーにとっては、将来にわたる投資と資源配分を誤らせる可能性があり、経済的な非効率を生む可能性を孕んでいる。

さらに、特定業種だけを対象としているのは、公平性に欠ける。

そもそも、恣意的に3つだけの製品を選んでそれに景品を与えること自体が、無意味な市場経済への介入であろう。その制度が終了した時点で、そこで生じた不経済と、すべての費やされた税金よりも、その売り上げ効果と環境への効果の方が大きい保証はどこにもないではないか。

消費者が購買するものを誘導しようとすること自体が、無意味であるし、税金の濫用であろう。買い換えなくても良い製品を買い換えさせるように誘導すること自体が、やはり無駄である。

もし、持続的に環境対策の強化と景気の浮揚を達成したいのであれば、このような無駄な、効果のはっきりしない政策に税金を費やすのではなく、法人税と所得税と消費税等の減税を行って、生産と消費を活性化することが必要だ。

メーカーに新技術の開発を促し、環境分野での新しいビジネスの形態を開拓するインセンティブを継続的に与え続ける必要があろう。一時的な景気対策ではなく、持続的な富の創造のための仕組みづくりが必要なのである。そのための創造的破壊と変革が、今求められているのだ。政治と行政は経済のエコロジーを乱すな。

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